年間新商品は50アイテム以上。
スピード感溢れる企画・開発力
宮崎市清武町の小高い丘の上。倉庫の中には数々の遊具が収まり幼心を刺激する。株式会社ワン・ステップはエア遊具の企画・レンタルを中心に事業を展開している。代表取締役社長の山元洋幸が学生時代に宮崎市中心市街地活性化事業として出店したチャレンジショップを土台に2002年に設立。増収を続け現在は全国3ヶ所に支店を持つ。❶所有する遊具は日本最大級の800種以上。年間50アイテム以上の新商品を投入し、開発からリリースに至るまでの期間は平均90日程度と、スピード感、商品開発力を武器とする。その理由について山元は意思決定の速さにあるという。「レンタルという業態上、できる限り早くお客様の目に触れ、反応を見るのがニーズを知るには一番の近道です」。社内から出たアイデアを元に製造は中国の協力企業へ依頼。10年来のパートナーとして質の高い一点物のエア遊具をつくり、ワン・ステップの事業を支えている。
スピード感の秘訣。
失敗を責めない文化が
成長を後押しする
同社のスピード感を支え、成長を後押しするもの。それは「失敗を責めない文化」だ。「リスクを取り、チャレンジをたくさん積み重ねないと実力はつきません。最初から正解を求められるプレッシャーのなかでは動きも鈍くなり、変化にも対応できない」。風通しの良さは社員が❷新商品のアイデアを出す際にも有益に働くほか、社内の業務改善にもつながっている。2023年は282件の改善提案があった。繁忙期のタスク管理などDX化を推進することで解決。そのプロセス自体が社内コミュニケーションを円滑にするのに役立ったという。「業務を見える化、情報格差をなくすことでより意見の出しやすい環境になりました」。
新卒採用を積極的に行ってきた同社は社員のうち約7割を20代が占める。「新卒社員を育てる責任が最初に雇用した会社にはある」と語るように人材育成にも力を注ぐ。❸毎年売上の1%を勉強の機会に充て、社外研修への参加を促すほか、毎月1回読書会を開きグループ内で知識を共有。会社の底力を蓄えている。
転換期となったコロナ禍。
広がるエア造形技術の可能性
増収を続けてきた同社だが、新型コロナウイルス感染症の影響を受けイベント中止が相次いだ。2020年4月~5月期の売上は前年比9割減。経営危機に陥り、さまざまな商品を企画するなか同社を救ったのがエア遊具の技術を生かした❹「エアー式簡易陰圧室」だ。2020年10月に発売を開始。他社より3~4ヶ月早い動きだった。設置が容易で感染者の隔離ができ、空調設備も整うことから医療・介護施設を中心に販売しコロナ禍の主力となった。
この機会を商機と捉え防災分野にも進出。「エアパーテーション」など多くのラインナップを揃える。さらに建設現場における転落事故防止マット、動物医療における大動物用手術台など❺エア造形の可能性は広がっている。
山元は今が会社の転換期と考え「2032年売上高55億円・社員150名」の長期目標を打ち出した。「私が代表を退いても30年、50年と成長する会社でありたい。それにはチームで経営ができる会社にすることが必要です」。苦難を乗り越えた今、新たな挑戦を始めている。
ニッチな市場、
独自性のある事業を狙う
ビジョンとして「小さな市場で日本一」を掲げる同社。イベント・エア遊具を扱う会社は設立当時は少なく、会社が成長するきっかけとなった。
新商品アイデア
プロジェクト
全メンバーから毎月1つのアイデアを出す取り組み。ブレスト会議やニーズ分析会議など、スピード感を持ち、商品開発・リリースまで行う。
「学び」に投資を
惜しまない環境づくり
山元は誰からも経営を教わったことがない。「学ぶ姿勢があれば教えてくれる人は周りにいる」という。
学術知見と確かな技術力を
合わせ早期開発を実現
宮崎大学の金子泰之准教授の協力のほか、陰圧装置は真空ポンプメーカーのアルバック機工株式会社が開発。自社の限界を超え、早期発売につながった。