特殊鋼鋼材の販売から
精密機械部品の加工・組立まで
自社一貫生産体制を確立
宮崎県延岡市に本社を構えるミツワハガネ株式会社は精密機械部品の加工・組立、特殊鋼鋼材の販売を主事業として展開している。1959年、鋼材の問屋業から始まった同社は顧客ニーズに応えるかたちで機械加工にも事業を拡大していった。そんな流れもあり❶材料の調達から加工・組立までを自社で一貫して行うことができることが強みだ。
特筆すべきは治工具をつくる技術。治工具とは製品の加工や組立をする際に、材料の固定や誘導といったサポートを行う器具であり、精密さが要求される製造業を影で支えている。この特筆すべき技術と設備を有していたミツワハガネに注目したメーカーから、航空機部品の治工具の相談に始まり、果ては部品そのものの製造へと話が発展。品質の高さ、難しさから当初現場は不安に包まれていた。しかし、「自分たちは航空機の部品を通して海の向こうの世界と仕事をしているんだ」と奮起。現・会長の甲斐千尋を中心に航空機専門チームを結成し、❷短期間で部品の精密加工を実現。2005年に本格的に参入を果たした。
航空機産業に参入
着実に国際的な
安心と信頼を獲得する
現・代表取締役社長を務める𠮷ノ薗順也は航空機産業に参入する直前の2003年に入社。社の転換期を肌身で感じてきた。𠮷ノ薗はそれまで紳士服の販売、電材の営業の仕事を経験。ミツワハガネに入社後は異分野の製造現場へ配属。「営業と異なる環境に戸惑いましたが、1年も経つと機械が楽しくて現場を離れられなくなりました」。航空機産業に参入すると大手メーカーとの窓口を任された。「人と接することが好き」な性格もあり人脈を広げていった。その種まきは2018年に社長就任後の関西営業所立ち上げなど後に花開くことになる。
ミツワハガネは2011年に品質マネジメント規格「ISO9001」、航空宇宙品質マネジメントシステム規格「JISQ9100」を取得した。「JISQ9100」に至っては九州地区初であった。さらにはフランスのパリに本社を置き、全世界で27カ国の拠点・約83,000人が働く航空宇宙・防衛・通信分野の複合企業体「サフラン」の「DK6000」認証も取得し、❸高品質・安全性の求められる航空機部品の世界的信用が同社のものづくりを後押しする。
「ものづくりから夢づくりへ」。
次世代へ受け継がせたい
技術と魅力
ワンストップ生産体制を武器に邁進する同社だが、現状に満足せず常に新しい取り組みを行っている。製造業の人手不足が叫ばれるなか働き方改革を推進。現場社員の多能工化、福利厚生の充実を図り、これまで4人の男性社員が育休を取得した。「育休で欠員が生じてもベテランが率先して新しい機械を覚えたり、周りがサポートする体制が自然と出来上がっていきました」。将来を見据えて、地元の中高生を対象にした企業見学を開き、❹ものづくりの魅力を次世代へ向けて伝えている。また、時代の流れ、外的要因に左右されずに売上をつくるため新たな製造ラインの立ち上げを準備している。「働いている人たちが『うちはいいよ』と自信を持って言える会社であれば『ミツワハガネで働きたい』と思う若手人材も増え、同時にものづくりの魅力も広がっていく。そんな会社をつくるのが当面のビジョンです」。ミツワハガネは希望を乗せ、未来へ向けて飛び立つ。
材料調達から
加工・組立を自社で賄う
材料調達、機械加工の双方に優れていることは同社の大きな強みとなった。
旅客機の
ランディングギアを手がける
エアバスA330・A340旅客機をはじめ国内外のリージョナルジェット機・ビジネスジェット機のランディングギア(降着装置)の部品を製造・加工している。
数々の認証による
強固な安心と信頼
住友精密工業株式会社の航空機部品の製造工場として認定を受けるほか「I S O 9 0 0 1 」「J I S Q 9 1 0 0 」「D K 6 0 0 0 」と国際的な規格や世界企業のサプライヤーとしても登録されるなど盤石な生産・供給体制を持つ。
次世代を意識した人材、
環境づくり
次世代のものづくり人材育成のため、社員の技術力向上やキャリア形成に力を入れるなど働きやすい環境を整える。また、町工場時代から職場見学を通じ地域へ向けてものづくりの魅力を伝えている。